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高校時代の髪型は坊主だった。
べつになにも面白いことはない。
何も考えず硬式野球部に入り、新しいグローブとバリカンを買った。
高校時代の野球部の思い出として印象に残っていることを書くことにする。
先輩ヤマサキさん
まず一つ目に思い出したこと、それはヤマサキさんのことだ。
ヤマサキさんはひとつ上の先輩でむちゃくちゃかっこよかったし、優しかったし、誕生日もぼくと一緒だった。嬉しかった。
ぼくのことをユウキと呼んでくれた。
ヤマサキさんの代の最後の夏の総体が始まる直前の時期の話だ。
セカンドだったハヤシさんが怪我をした。
たしか鼻を骨折したんじゃなかったかな。
当時ぼくは2年生でレギュラーじゃなかった。
でもハヤシさんが怪我をして、ぼくは守ったことのなかったセカンドでスタメンで出れることになった。
ヤマサキさんはショートのレギュラーだった。
セカンドとショートというのは、すごく連携が必要だし、いわば「コンビ」みたいなところがあった。
ヤマサキさんは最後の夏の総体前の少ない練習時間の中で色々なことを教えてくれた。
すごく楽しかった。幸せだった。ヤマサキさんはやっぱりかっこよかった。
迎えた最後の公式戦。相手は神港学園という甲子園常連校だった。
負けたら大好きなヤマサキさんたちの代の先輩は引退か・・・寂しいな、え、ほんとに終わり?といったことを考えながらガチガチになってセカンドの守備についた。
プレイボールのサイレンが鳴り響く。
ショートのヤマサキさんが大声で笑ってぼくに「エラーすんなよ!」と声をかけてくれた。
ガチガチだった身体がスッと軽くなった。
エースのワタヌキさんが投げたボールを相手バッターが打ち返し、ボテボテのショートゴロとなった。
「ショ、ショート!!(ヤマサキさん!!頼みますよ!!)」
ヤマサキさんは定位置から1、2歩前進し、ボールを掴んだ
・・・と思った瞬間、ファンブルした。(ボールがグローブから落ちた)
ノーアウト、ランナー一塁・・・・・
めちゃくちゃ面白かったので、それ以降固さがまったくなくなった。
なのでぼくはヤマサキさんに「楽に!」と声をかけた。
後輩カズミチ
2つ目の思い出は後輩カズミチだ。
ぼくらの一つ下の代でカズミチという男がいた。
カズミチはとてもかわいらしい顔をしていて、細くて、そこまで身長も高いわけではなかった。
うちの野球部では入部したら初めに「ホームベース上から一人ずつ大声でレフト奥でくつろぐ諸先輩方に自己紹介する」 という恒例行事があった。
自己紹介の内容は自由。
ただし、ここに笑いが含まれているか、ここの一点を先輩は楽しむ。
野球部に入部したら誰もが通る道だ。
ただし、まだ右も左もわからない高校ライフがスタートしたばかりで、先輩がどんな人かもわからないこの時期に笑いの詰まった自己紹介をできるやつはそうはいない。
実際、ぼくもどんな感じでやったのか、まったく記憶にない。
きっとなにも面白くない自己紹介だっただろう。
そんな中、カズミチは大声で
「カズミチです!ポジションはサードです!好きな芸能人はマナカナのマナです!」
と言い放った。
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どちらがマナでカナかは知らない |
ぼくはこの自己紹介に感動したのを今でも憶えている。
※以降、フジモトは自己紹介で実際に何度かこのネタを無断使用している
ど田舎の水曜日,フジモトユウキ