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2013年5月30日木曜日

【小説】泡になりたい、君と。〈No.13〉


「お客さん、終着駅ですよ。」


駅員の声で僕はまた現実的な時間の流れと合流する。適当にその駅員に頭を下げて電車を降りた。また一段と寒さが増したことを感覚で読み取り、ついでに辺りの普遍的な暗さを視覚で読み取った。そこは京都駅だった。別に初めてきたわけではないけれど、とにかく自分の居場所から離れることに成功できて満足感を覚えた。小奇麗な駅舎を出ると目の前に凛とそびえ立つ京都タワーが京都の夜空を支配しているように存在していた。そいつを横目に僕は近くのファミレスに入った。そしてコーヒーを頼んだ。熱い液体が喉を通過する瞬間、ほんの少しの安堵を覚えた。僕は生の温度を体感し、頭の中での時間がしばし休止する。目の前の風景がぼやけてくる。「今」の思考が完全に停止する。


僕は今、彼女に会いに行こうとしている。想像が、確信に変わった。

不安定な木曜日, ノムラカズユキ