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2012年9月13日木曜日

【エッセイ欄】雨のホーチミン

名古屋に出張し、福井への帰路で思い出したのは雨のホーチミンであった。




雨のホーチミン




僕はホーチミン空港で約8時間も過ごしたことがある。オーストラリアから日本へ帰る途中だったのだが、飛行機の遅延で予定していた便に乗り換えできなかったのだ。


よくあることだ。


8時間、空港内で過ごした訳だが、その間ずっと外は雨だった。


なぜ福井への帰路でそのシーンを思い出したのかは分からない。もちろん真っ当な理由はない。特急しらさぎの車内、外の景色、少しの疲労、何かがそうさせたのだろう。とにかく思い出したのだ。


約8時間。1人で、そして異国の空港内で過ごすにはあまりにも長い時間だ。ただ救いだったのは無線LANがフリーで使えたことだ。当日僕はiPhone3GSを愛用していた。暇な時間、僕はすぐさまiPhoneを無線LANに接続し、Skypeを立ち上げた。


そしてアメリカに留学中の友人にSkypeをかけてみた。すると彼はすぐに出てくれた。彼がいつも暇していることを僕は知っていた。


約2時間、いわゆる恋バナをしたことを覚えている。ベトナムとアメリカをインターネットで結び、日本人同士で他愛もない話をしたわけだ。話の詳細はほとんど覚えていない。鮮明に覚えていることは、熱くなったiPhone本体のあの感触。それだけだ。


残りの6時間。


そのうち1時間は食事で潰した。


「ノー、パクチー、プリーズ」

注文時にそう言ったにもかかわらず、大嫌いなパクチーがたくさん乗せられたフォーを出され、泣きそうになりながら食した。今となっては、その思い出に泣きそうになる。不思議なものだ。


最後の5時間。


ロビーで瞑想した。テレビでは古い香港映画がもちろんベトナム語吹き替えで流れていた。内容が全く分からなかった。聞こえてくるベトナム語を極力遮断し、瞑想に勤しんだ。


何に、どこに思いを馳せたのかはよく覚えていない。気がつくと5時間が経っており、香港映画は終わり、ニュース番組が始まっていた。テレビの音量は小さく抑えられ、外の雨音が妙に際立っていた。


「まだ雨が降っているのか」

瞑想の終着点がそれであった。


今日、福井の天気は晴天である。

雨が降る気配はない。ただどことなく秋の匂いがしている。


雨のホーチミン、晴れの福井。

確か、雨のホーチミンも9月であった。


それだけだ。

もう何年前のことだろう。
3年か、4年前。


まさか名古屋出張でホーチミンを思い出すとは。
名古屋とホーチミン、何かつながりがあるのか、、
そう思って色々調べたものの何も繋がっていなかった。

分かったことは、ホーチミンの姉妹都市は日本に一つしか無く、それは大阪市であるということだ。



兎にも角にも何年後か、またこの不思議な思考回路に泣きそうになることを僕は確信した。



名古屋、しらさぎ、晴れの米原。

そして雨のホーチミン。


不安定な木曜日, ノムラカズユキ